筑摩書房

文学

朝井リョウの当事者から逃れられないこと

【『週刊文春』2026年8月27日号「当事者として書くということ」】 私自身の10代を振り返ると、なんだかなあと思ってしまう事柄がいくつも思い出される。全般として、なんの脈略もなくゆるゆるとした学生生活を送ってしまったために、何かしらの“当...
文学

〈再録〉開高健『開口閉口』―やらされることの美学〈1〉

【清らかな自然に囲まれた山荘より】 ――こんな夢を見た。 人権擁護の活動家である私は、都会の喧騒を離れて、山荘にこもった。 夜な夜な、名前のよく知らない銘柄のスコッチを一杯飲む。すると、じんわりとした温かさが体を包み込んで、疲労感が一気に抜...
文学

〈再録〉漱石『こころ』の身体性について

【夏目漱石『こころ』】 夏目漱石の小説を読み終えると、いつも雑駁とした気持ちに駆られる。様々な思念が頭をよぎりすぎて、判別しがたい感情の複雑な振幅にしばしの眩暈を覚える。 最初の眩暈こそ、高校時代に読んだ漱石の『こゝろ』(以下『こころ』)で...
文学

〈再録〉「ささやかな時計の死」に関するささやかな雑感

またもや“時計”にまつわる話である(当ブログ「〈再録〉パタパタ電波時計と学習教材のこと」参照)。【高校国語教科書の中の「ささやかな時計の死」】 2005年発行の高校国語教科書『新現代文』(筑摩書房)に村上春樹氏のエッセイが扱われている。「さ...
演劇

〈再録〉『洋酒天国』―ジャズと日劇〈2〉

【在りし日の日劇の姿。『洋酒天国』第58号より】 壽屋(現サントリーホールディングス)PR誌『洋酒天国』(洋酒天国社)第58号は、昭和38年7月発行。熱っぽくルイ・アームストロングのジャズの話で盛り上がった前回からの続き。 今回は日劇――。...
文学

〈再録〉リルケの駆け落ち話

【またもや登場の高校国語教科書『新現代文』】 馴染みの薄い作家を読むと、ゾクゾクとするものを感じる。 この場合の馴染みが薄いとは、存在を知っていながらもわざと遠慮して、理解を恐れ読まずにいた、という意である。 以前ここで書いたことのある梶井...
映画

〈再録〉ニコラス・レイあちらこちら

【何度でも登場しますが、これが伊丹十三著『ヨーロッパ退屈日記』です】 興奮冷めやらぬまま――。 アメリカ大統領選でトランプ氏が返り咲いた一報が届いたが、そんなことで私が興奮していたのではない。 しかと心得て遠距離恋愛を構えるのなら、人生の全...
文学

〈再録〉A子と教科書と魯迅

【魯迅を読むために開いた光村図書の国語教科書】 近頃、魯迅を読み始めていて、自宅の書棚にあった古い国語教科書に手が伸びた。 その所作は我ながら電光石火の如きであった。この国語教科書に、魯迅の作品がもしかしてあるのではないかというのは、なんと...
文学

〈再録〉教科書の中の高村光太郎

【高校3年時の国語教科書は筑摩書房だった】 音楽における創作活動のうち、【作詞】という分業は、私にとって切実な命題となっている。 あるリズムを伴ったメロディに、言語を織り込んでゆく作業。言語の一片一片の音の形(音韻)、語彙、意味からくるイメ...
文学

虎になるということ

【『小説すばる』2024年9月号で『山月記』を久しぶりに思い出した】 李徴(りちょう)は虎(トラ)になった。その変身の悲劇に何たることかと巻き込まれていったのが、友人の袁傪(えんさん)。李徴は袁傪に、自分は死んだ――と妻子に伝えてほしいと懇...