
今年4月から放送されているテレビドラマ『ディープリベンジ-顔を捨てた家政婦-』(主演:堀未央奈、石川恋、飯島寛騎、松井利樹)がめっぽう江戸川乱歩っぽいな――というところで、最近注目してしまった。
あのおどろおどろしい包帯顔は、どこかで見たなあ。そう、天知茂さん主演の“美女”シリーズ、『白い乳房の美女 江戸川乱歩の「地獄の道化師」』(1981年)に登場する哀れな女・野上みや子ではないか!! あの時の包帯顔のみや子を演じていたのは、片桐夕子さんだった。名女優である。
ところで、『ディープリベンジ』で御堂良一役を演じているのは飯島寛騎さん。随分前のフリーマガジンに表紙を飾っていたな、ということを思い出した。
コロナ禍という不遇の時代
今年のはじめ、東京・神保町のとある古書店さんの広告を見て、私は思わず腰が砕けそうになってしまったのだった。
《謹賀新年 ことしもどうぞよろしく》
これは平易なお正月のご挨拶であり、別にこれで腰が砕けたわけではない。ただ、その後に続く文言が、
《コロナ感染が収まってまいりました。引き籠もりがちではないでしょうか。この時に蔵書を見直して…》
今年の話である。今年の正月の広告で、「コロナ感染」の煽りを憂うご挨拶を見るとは思ってもみなかった。
私は絶句したのである。「コロナ感染」が収まったのは、もう3年くらい前のことじゃないか――。広告主が時代錯誤の古い文言に気づかず出稿してしまったのかどうか知らないが、ともかくそれはコロナ禍で平易だった定文であり、懐かしいというよりも、皆けっこうコロナウイルス(COVID-19)の騒ぎが好きだったのではないかとさえ勘ぐりたくなるのであった。不謹慎極まりない想像であるが――。

『ジャパニーズ インベスター』というフリーマガジン
そういったコロナ禍に、私は一冊のフリーマガジンを読んだのである。
投資&IRマガジンの『ジャパニーズ インベスター』(株式会社ディスクロージャー&IR総合研究所)。2021年夏号(No.109)。時期的には、ちょうどコロナ禍になって2年目の頃。この号の表紙が、飯島寛騎さんだった。
いってみれば、こうした硬派の雑誌の表紙に、ゆるめのイケメンである飯島さんが起用されていることにまず驚いた。もちろんこの関係、あくまで表紙モデルとしてのお仕事であり、飯島さんと投資とは別に直結していないと思う。
しかしながら、2ページを割いて、彼が当時出演していたテレビドラマ『警視庁・捜査一課長 season5』に係るインタビューが掲載されていたのだ。いうまでもなく、投資と警視庁の捜査一課ともなんら関連性がない。あくまで飯島さんの俳優としてのお仕事の内容であった。
つまり、このフリーマガジンは、一般の投資家が日曜日の午前、コロコロとした飼い猫と戯れつつ、チョコを頬張りながら読む本だという前提で、多少なりともエンタメのトピックに立ち寄って気分を軽くしておいて、本題の投資の情報にふれてもらいたい――という編集方針なのだろう。エンタメの色合いは極力避けられてはいるが、俳優さんとしてもこういうお仕事はけっこうありがたいものだと思うのだ。

ESGってなに?
さて、この号の内容を、素人ながら最大公約数的に要約すると、こういうこと。
投資の普遍的なテーマは、ESG(環境、社会、企業統治)であり、企業理念はとても大事。
以前のCSRとかSRIよりも進歩的になり、もっと企業の存在価値に結実していく部分の評価が大事だということ。
ある小さな個人経営のお店(食堂)が、「無料食堂」を始めたというトピックが紹介され、そんな「無料食堂」なんて、やっていけるの? 経営という面でどうなの? と誰もが不安視するのだが、お店はますます大繁盛したという。
ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)さんの話も出ていた。彼は「投資の神様なんだよ」という話。
バフェットさんが株を買うと、株価が急上昇するのだという。なぜそうなのかということが詳しく書かれてあった。普段私は全く投資のことに関心を抱かない人、なのだが、フリーマガジンとして考えてみても、『ジャパニーズ インベスター』はなかなか読み応えのある雑誌であった。
実はこの稿、本当はボツだった
思い返してみると、コロナ禍でけっこう遠出がしづらくなり、ミュージアムや旅行やカラオケが遠慮され、なんとなく心が晴れずにもやもやしていた時にこの本を読み、企業のESGって、もしかしたら個人にも当てはめられるのではないかという想像をしたのだった。
それをジャカジャカと書き記しておこうと思っていたところ、なんだか知らないうちにコロナ禍が去り、ソーシャル・ディスタンスの距離感が少しずつ縮まっていって、まあ結論としてはこの稿はボツかな、と判断したのを思い出す。
最近の話としては、コロナウイルスでも有効な、感染症対策の最も手軽な自衛手段としての「手洗い」が、あれ以降、自衛手段だとも思っていないほどに、男性トイレのあとで「手を洗う」男の人は、おそらく半減してしまったのではないかという感覚がある。たいていの男の人は、手に水をつけ、30秒どころか3秒も経っていないで出ていってしまう、というパターンがあまりにも多い。「手を洗う」習慣ではなく、「手を洗わない習慣」のほうが深く根づいてしまっていて、これはもう教育の不徹底さ(=感染症の軽視)という以外にない。
ESG。
そうだな、自分を磨く、鍛える、ダメな習慣を変える。そういう見直しを図って自己投資するってことを、一種の虚構のように、コロナ禍が去った後の人々は考えなくなり、元の木阿弥、感染症に疎い状態に戻る。コロナウイルスというのは、ちょっと異様なパンデミックだったわけだけれど、いつの間にか、個人のESGなんていう発想は誰も考えないようになってしまった。
自分で磨く、鍛えるって目標を掲げ、なにかにチャレンジする。あるいはセルフケアする。つまりそれって自己投資だよねということはとても大事なことだと思うので、今更ながら2026年5月に、この稿を書き直した次第なのである。
ところで飯島さんは、昨年末、テレビドラマ『夫を社会的に抹殺する5つの方法 Re:venge』に出演していた。どうも飯島さんに復讐劇が絡みついてくるようだ。だから、彼がおどろおどろしい乱歩の怪異な作品と関わることを、将来期待して已まないのである。

コメント