青沼ペトロの年頭所感―[Utaro Notes]消えました

 琥珀色のウイスキーが渇いた喉を潤す。
 Spotifyから流れてくるのは、美空ひばりさんの「川の流れのように」――。
 昨年末、寒い日にトナカイが去った後、少し経ってそこに置かれていたのは、愛する人からの青色のプレゼントだった。想像すらしていなかった。これで私は一生分の幸せに浸れると思った。この時、少々己惚れていたかもしれない。
 だからこれ以上、己惚れて浮かれないように、どこかで「禊ぎ」や「浄め」の儀式をしなければ、公正ではないなとも、感じていた。それはまもなく、現実のものとなった。

 この稿の主旨を、あらかじめ冒頭に掲げておく。

  •  この度、アーカイブとして運用していた旧文藝ブログ[Utaro Notes]は、完全に消えました
  •  なお、当文藝ブログ[Petro Notes]につきましては、これまで通り引き続き、投稿配信して参りますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします。

[Utaro Notes]が消えたのさ

 なに? [Utaro Notes]が完全に消えただと?

 刑事ドラマごっこをやっている場合ではない。そんなふうに声を張り上げてムカついた人は、たぶんどこにもいないと思う。ふーん、そうなの、残念でしたね、くらいの話で済んじゃうことなのかもしれない。

 顛末はこういうことだ。
 昨年の暮れ――。ポータルサイト[Dodidn*]をリニューアルすべく、サーバーにデータをアップロードしていた際、ふと思った。長い。そんなわけはない。これもしかして、下層のブログまで消したり上書きしてしまっていない?
 もはや止めようがなかった。あーといってる間に、アップロードは終わり、新しいサイトのデータはそこに加わった。が、ブログのデータはすっかり全部、すっ飛んでしまっていたのだった。

 こうなった時の対処法は、データのリストアである。
 サーバー上のバックアップフォルダから、自動で蓄積されていた24時間前のブログデータをコピーして、元に戻った形にすればいい。
 やってみたのである。が、それを実行しても、どうも不具合が残る。投稿用のダッシュボードを開こうとして開けない。とどのつまり、ブログを再開することができなくなってしまったのだ。

〈うーん、依然として芳しくないですね。青沼君〉

芳しくないどころか、マズイぞこれは

 自分で自分を責めるつもりはなかった。がしかし、まもなく2026年になるタイミングのこれは、いささか奇妙な因果というべきか、何か因縁があるとしか思えなかった。
 例えばたいへん困っている演技をするにしても、映画『麻雀放浪記』(1984年)の少年役を演じた真田広之さんの表情は決して暗くなく、眉間にしわを寄せることもなかった――のを思い出し、それでいこうと思った。
 マズイぞと思えば、悪魔の思う壺である。決して私は、相手の麻雀牌から目を離さなかった。…は?

 ふと頭によぎる。
 麻雀の話ではない。だが、大事な局面ではある。それにしても、このままブログが消えた状態というのは、果たして私にとって悪いことなのか。それとも逆に、都合がいいことなのか。何か、新しいきっかけになるのではないか――などと、いろいろなことを考えてみたのだ。

 それからしばらくして除夜の鐘が鳴り、寝て起きて決心したこと。

 それは、旧ブログのデータが消えた状態を、「維持しておくべきだ」ということ。
 つまり、データがそこに有るのか無いのかにかかわらず、私はこれを、〈[Utaro Notes]は消えて、アクセス不可になりました〉という理由的解釈に紐づけて、このことをさらりと受け入れよう――ということなのである。

敢えてゼロ地点に向かえよ

 個人的にはいろいろな意味で、大変な不都合が生じることであろう。
 なんといってもこれまでの数十年間、書き殴ってきた900を超えるエッセイの大樹が、もはや閲覧することもできず、実体として消えて無くなったのだから。不都合なことであるし、気持ちとしては穏やかでいられない。さらには、ご愛顧いただいてきた訪問者のリピーターの方々にも、多大な迷惑を被ってしまうような話である。
 それだけではなく、エッセイに記されてきた個人史的な資料と、その膨大な事実性の痕跡が、どこにも無くなるのだから、私は一体何をしてきたのか、いや、これから先、消えてしまったものからどう新たな軸足を為すべきか、この先どう前へ進めればよいのか――という話にもつながってくる。

 いわば、不都合だらけで恐ろしくなる。
 卒業した千代田学園の記録も、あの長い長い「パンツ論」のシリーズも、あるいは出会いや別れの一切のテーマなり思索の記録が、全く白紙となってゼロに戻るなんてことに、意味などありはしないのだ。

 だがね、青沼君。

 そこから新しく始めるのが、もしかして君に一番ふさわしい道かもしれないよ――と、耳元で誰かが囁く。天の声である。だってもう消えてしまっているのだから、悔やむべき事態ではなく、私自身のさらなる転機となりはしないかと、考えてみた。

 よし、これでやってみるか。

 この度は、誠に申し訳ありません。旧文藝ブログ[Utaro Notes]は、いっさい消えてしまいました。もう二度と閲覧することも、復元することもできません。皆様に深く深く、お詫び申し上げます。

 さあ、気分を変えて新しく始めよう。
 ウイスキーを飲み直そうじゃないか。
 美味いなあ、これ。
 明けましておめでとうございます。

追記:復元する方策がありました。それに関しては、こちら

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